一層のチーム連携充実により
質の高い循環器診療を地域の皆様にお届けしたい

 現在循環器疾患は日本人の死因の2位を占め、今後高齢化社会の進行とともにその増加が見込まれています。なかでも近年、心不全患者が顕著に増加しており、「心不全パンデミック」とも表現されています。心不全は様々な心疾患を背景に発症するいわば心疾患の終末像であり、その治療には循環器内科としての総合力が必要となってまいります。そのためには循環器各専門分野のエキスパートを育成することが不可欠です。医学部学生、研修医の教育に引き続き力を入れるとともに、医学部附属病院での循環器診療をより一層活性化させることで、若手医師の循環器専門医としての迅速な自立と持続的なスキルアップを目指したいと考えます。
 また心不全診療を始め循環器疾患診療においては、循環器内科のみでなく、心臓血管外科と「ハートチーム」としての一体となった活動が今後ますます重要性を帯びてまいります。また医師も加えた多職種による包括的な介入も非常に重要です。ハートチームとしてまた心不全診療を始め循環器疾患診療においては、循環器内科のみでなく、心臓血管外科と「ハートチームの心臓血管外科との連携、さらには、他科との連携、多職種連携、病診連携のより一層の充実を目指し、質の高い循環器診療を地域の皆様に届けることのできるよう教室員と一緒に励みたいと考えております。
 一方でこのような循環器疾患の増加に伴い、循環器疾患に対するより新しい予防法・治療法の開発も求められています。そうしたニーズに応え得る高いレベルの医学研究を行うことは大学の使命でもあり、そのためには、臨床研究と基礎研究をバランスよく行っていくことが必須であると考えます。現在、日本では「先制医療」、米国では「Precision medicine」といった言葉で、バイオマーカーや次世代シークエンス解析データなどを基にしたより適切かつ正確な早期の医療介入の将来的な重要性が認識されています。循環器疾患はこうした次世代医療の早期の展開が期待される分野でもあり、そうした次世代の医療をリードするために、臨床研究と基礎研究の両者を高いレベルで理解する「Physician-Scientist (臨床医科学者)」の存在が不可欠です。信大病院からこうした次世代の予防法、治療法を発信していくことが可能となるよう、高い志を持って循環器疾患の臨床研究と基礎研究を行っていきたいと考えております。

循環器内科教授 桑原 宏一郎