心臓弁膜症について

心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしています。心臓の中には全部で4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)があり、開いたり閉じたりすることで血液の流れを調節しています。しかし年齢と共に心臓弁の働きが低下し、十分に開きづらくなったり(狭窄症)、閉まりづらくなったり(閉鎖不全症)して、心臓に過度な負担がかかり、心臓が十分に働かなくなる心不全に至ることがあります。これらを心臓弁膜症といいます。心臓弁膜症は高齢化に伴い年々増加しており、日本では200-300万人の患者さんが罹患されていると言われていますが、その症状に気づかずに医療機関を受診されていない方が多くいると考えられています。

心臓弁膜症の症状と検査

普段の生活の中で坂道や階段を上ったり、長い距離を歩いたりした時に、息が切れることはありませんか?もしかしたらその原因は心臓弁膜症の可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。
心臓弁膜症かどうかは、心臓超音波検査で診断することができます。心臓超音波検査は超音波が出るプロ―ブを胸に当てて心臓の動きや弁の働きを短時間で観察することができます。心臓弁が十分に開きづらくなる(狭窄症)、閉まりづらくなり血液が逆流する(閉鎖不全症)所見がないか観察します。また心臓弁膜症の程度を評価することができます。程度が軽度の場合は経過観察で問題ないことが多いですが、進行した弁膜症の場合は人工弁治療が必要になることがあります。

心臓弁膜症の標準治療

人工弁治療は、新しい人工弁を挿入したり、ご自身の弁を補修したりすることで、弁の機能を改善し心臓の負担を軽減します。通常、全身麻酔下で開胸手術による 「外科的弁置換術」や「外科的弁形成術」を行います。通常4-5時間で終了します。手術後は早期にリハビリを開始し、およそ3週間前後で退院となります。
人工弁は、炭素繊維やチタンでできている「機械弁」と、ウシやブタの心臓組織を加工した「生体弁」があります。機械弁は耐久年数が長い(約30年)ですが、血栓予防目的に血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の内服が必要です。生体弁は、血栓が生じにくいため永続的な抗凝固薬の内服は不要(術後3か月間のみ服用)ですが、機械弁と比べて耐久年数が短い(約15年)です。年齢や全身状態を考慮し、患者さんの状態に適した人工弁を選択します。

低侵襲な心臓弁膜症治療

開胸手術による心臓弁膜症治療は、手術治療を乗り越えられる体力がある方にとっては、極めて有効な治療です。しかしながら高齢な方や筋力、体力など活動度が低い方は、手術治療で弁膜症が改善しても、術後のリハビリが思うように進まず、結果的に術前よりも活動度が低下してしまうことが時々あります。
2013年から大動脈弁狭窄症に対して、開胸せずにカテーテル(管)を用いて新しい人工弁を挿入できる治療(経カテーテル大動脈弁留置術:TAVI)が保険診療で可能となりました。TAVIは開胸手術ではなくカテーテル治療であり、治療翌日から歩行、食事、リハビリが再開できるため、体力が低下することなく短期で退院が可能です。人工弁を挿入するため、外科治療と同様の効果が得られます。主に開胸手術の心配が多い場合に、積極的に検討します。
他にも、僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(経皮的僧帽弁接合不全修復術)の導入を予定しています。TAVI治療と同様に、開胸せずにカテーテルを用いて逆流を生じている部位にクリップを留めて逆流を制御します。
今後もカテーテルを用いた低侵襲治療の領域が広がってくるものと思われます。息切れ症状がある場合は、かかりつけ医に相談しましょう。当院で精密検査が可能です。

経カテーテル大動脈弁挿入術

開胸することなく、大動脈に人工弁を挿入する。

重症僧帽弁閉鎖不全の経食道心臓超音波検査

右図のモザイクの部分が血液が逆流している部分です。こういった疾患も状況に応じ今後カテーテルを用いて開胸せずに治療できるようになります。

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循環器内科 地域医療連携室(平日・日中の受付 8:30〜17:30)
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