心不全ってなんですか?

その答えを、2017年10月に日本循環器学会と日本心不全学会が合同で発表しました。一般向けの心不全の定義です。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、“生命を縮める”病気です。」と説明しています。
これまでは心不全と診断されても、なかなか治療に積極的でなかった患者さんたちに、心不全が生命にかかわる病気であることを理解していただくため、わかりやすい表現で病気の重要性を伝えています。

心不全では、体の中に何がおきているの?

心不全の患者さんの体の中では酸素の需要と供給のバランスが崩れています。その原因は、心臓が弱っているためであることが多いです。体を動かすには手や足の筋肉に酸素とエネルギーを届ける必要があります。頭を使うには脳に、食事を消化して吸収するには胃や腸に酸素と栄養が必要です。ポンプである心臓が弱ってしまうと、必要な酸素と栄養が届かなくなるため、体の働きが悪くなります。動くと息が苦しい、すぐに疲れるというのは典型的な心不全の症状です。

心臓が悪いとなぜむくむのですか?

心不全になると体の中では、酸素と栄養を必要としている臓器に十分にそれらを届けるために、血液の再配分が起きます。重要な臓器に血液をより多く配分しようとする変化です。一つは体液貯留です。血液が尿として排出されないように腎臓で水を再吸収して血液量の減少を防ぎます。もう一つは血管収縮です。重要な臓器への血液量を維持して、手足の血流を減らすように毛細血管が収縮します。
このようにして血液(=酸素と栄養)の配分がうまくいっている状態で維持されている状態を「代償されている」といいます。ところが、「代償がうまくいなかい」状態になると、体液貯留や血管収縮が過剰となった結果、体に不調を生じます。むくみや血圧上昇、突然の呼吸困難が典型的な症状です。この状態を「非代償」性心不全といいます。多くの非代償性心不全は入院治療が必要になります。

心臓に何が起きているの?

心臓が弱ってしまう原因にはいろいろな原因があります。最も多い原因は心筋梗塞や狭心症によって心臓に酸素が届かなくなる病気です。心臓はポンプとしての役割を果たせなくなり心不全になります。これ以外には、大動脈弁狭窄症をはじめとする心臓弁膜症、心臓細動を代表とする不整脈が頻度の高い原因です。高血圧や糖尿病も心不全の原因になりますので、普段の生活から健康管理を心がけることは非常に大切です。

心不全は治るの?

実は弱ってしまった心臓を生まれたころの元気な状態に戻す治療はありません。しかしお薬をはじめとした心臓の治療をきちんと受けていただければ、その状態に近づくことが可能です。心不全の原因によって治療の方法が異なりますので、心不全かどうか、原因は何かについて、きちんと診断を受けていただくことが大切です。最新の医療を受けていただくことで、多くの方々が元気な生活を送ることができます。

図左:重症心不全の胸部X線写真。強心薬点滴から離脱できない状態。

図右:植込み型補助人工心臓(VAD)を挿入したことで、心不全が改善し(胸部X線上、心臓が小さくなり肺うっ血がとれている)点滴から離脱。社会復帰できました。
 

普段気を付けたほうがよいことは何ですか?

予防と健診です。生活習慣病といわれる、高血圧、糖尿病、脂質異常症を予防します。塩分や摂取カロリー、食事内容に気を配りましょう。適度な運動と組み合わせて予防を行うことが効果的です。タバコは動脈硬化のみならず万病のもとですので、ぜひ禁煙しましょう。

当日受診が必要と思われる場合

夜間・休日受付を含む
胸痛センターホットライン(24時間対応)
電話 0263-37-2222(高度救命救急センター内)

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外来予約 etc.
循環器内科 地域医療連携室(平日・日中の受付 8:30〜17:30)
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