心臓リハビリテーション

心臓リハビリテーションについて

当院では2010年にリハビリテーション部の一画に「心大血管リハビリテーション室」を開設しました。開設10年目に入り、入院中から退院後の外来通院期まで、多くの患者さんが心臓リハビリテーション(通称心リハ)を実践し、心血管病の再発予防を目指しています。
心リハ室開設後、それまでは入院期の患者さんに対して行われた心リハを外来患者さんに対して継続して行うことができるようになりました。これは、心リハの意義を考える上ではとても重要なことです。

一般的にリハビリテーションというと、整形外科の手術後や脳卒中の患者さんが行う運動機能訓練をイメージされる方が多いと思います。最近は、このリハビリテーションの一分野として、心リハが注目され、多くの施設で行われるようになりました。
心リハとは、「心血管疾患にかかった患者さんが、低下した体力を回復し、自信を取り戻して、安全かつ速やかに社会や職場に復帰し、さらには病気の再発を予防し、元気に長生きをすることを目指して、運動療法、患者教育、生活指導、カウンセリングなどを実践してもらう長期的なプログラム」のことです。簡単に言うと、病気を再発させずに、その人らしく元気で長生きしてもらうことをサポートするプログラムのことです。心疾患の治療には、薬物療法や手術療法だけではなく、食事療法、運動療法が重要です。日々の食事や運動はおひとりで頑張り続けることが難しいことも多いため、外来心リハにて定期的に様子をうかがいながら、一緒に頑張っていただいています。

心疾患患者さんに運動療法が必要な理由

ここからは、主に運動療法についてお話していきます。
心疾患患者さんは心機能が低下しているため、運動時の息切れや疲労感を起こしやすいという特徴があります。このため、自分でも気がつかないうちに症状のない範囲での生活をするようになり、さらに体力が低下するという悪循環に陥りやすいです。また高血圧、糖尿病、脂質異常症のような生活習慣病や、喫煙習慣など動脈硬化の危険因子をお持ちの方が多く、これらを改善しないと、心疾患が悪化したり、脳梗塞、動脈瘤、閉塞性動脈硬化症などの血管病を発症したりする場合があります。

心リハでは、そういった患者さんに対し、適切な運動療法を行う事によって自信を持って日常生活を行える身体活動能力を獲得できるようにするとともに、患者教育、指導による再発予防を行っていきます。
運動療法は体力を向上させ、息切れ症状を改善させ、動脈硬化危険因子を減らします。徐々に運動時の症状が少なくなり、不安やうつ状態が改善して、体を動かすのが楽しくなります。そして、長生きできる効果もあると報告されています。
しかし、運動のやりすぎはかえって悪影響を及ぼす場合もあり、《適度な運動》が大事になってきます。
心リハ室では、この《適度な運動》を実践するために、理学療法士が運動を指導し、看護師が生活指導を行っています。運動療法を開始する際に、可能な限り心肺運動負荷試験を行い、その方の体力を確認し、その結果を基に個々に運動メニューを作成します。外来心リハプログラムでは、ストレッチ、有酸素運動(エルゴメータやトレッドミル)、筋肉トレーニング、呼吸体操など実施してもらい、その中で、日々の食事や運動、禁煙の様子など伺い、心リハが実践できているかどうか、どのように工夫していったらよいかなど相談しています。

心大血管リハビリ室

スタッフの指導のもと運動療法を実施

当院の外来心リハプログラム例(入院期から開始する場合)

現在、心筋梗塞発症後、心臓手術後、大血管手術後、慢性心不全、閉塞性動脈硬化症など心リハが必要な患者さんが多く通院されています。今後も楽しく安全に運動療法含め心リハを実践できる環境を整えていくよう工夫して参ります。運動に不安がある心血管疾患の方、積極的に運動療法に取り組んでみたい方、心リハをご希望の方、あるいは運動の検査をご希望の方は、まずは主治医にご相談ください。私たち《チーム心リハ》と一緒に楽しく体を動かしましょう。