家族性コレステロール血症の患者さんや、糖尿病・高血圧等リスクを複数お持ちの患者さんなど、動脈硬化性疾患のリスクの高い患者さんにおいて、LDLコレステロール値の厳格なコントロールを行うことが、冠動脈疾患発症の予防につながるということが広く知られています。

さらに、近年これまでの内服治療に加えて、さらに強いコレステロール低下作用が期待できる注射薬も登場したことにより、LDLコレステロール値への注目が、さらに高まってきています。

現在、日本における動脈硬化予防のガイドラインにおいて、コレステロールの治療目標値は、患者さんのリスクにより設定されています。冠動脈疾患2次予防については、LDLコレステロール100mg/dl未満、リスクが特に高い患者さんは70ml/dl未満と非常に高い数値が設定されています。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第3章動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理)

しかし、動脈硬化性疾患のリスクはあるにもかかわらず、十分なコントロールを達成できない患者さんも多く存在しているのが日本の現状です。その背景には、家族成功コレステロール血症、スタチン不耐なども関わっています。

当院は「家族性コレステロール血症紹介可能施設」として日本動脈硬化学会に認定されました(2024年4月1日)。 毎週火曜日午後に専門外来をおこなっています。

当外来では、患者さんそれぞれの生活背景・疾患リスクを十分に評価した上で、脂質異常症の状態を把握し、治療法(内服治療、運動療法、食事療法、LDLアフェレーシスなど)を提案させていただきます。

  • 家族性高レステロール血症の診断(遺伝子検査も含む)・治療
  • 動脈硬化性疾患予防のための1次予防・2次予防
  • PCSK9阻害剤導入など

リスク区分別脂質管理目標値

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治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL)
LDL-C Non-HDL-C TG HDL-C
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物療法の適用を考慮する
低リスク <160 <190 <150(空腹時)***
<175(随時)
≧40
中リスク <140 <170
高リスク <120
<100*
<150
<130*
二次予防
生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往 <100
<70**
<130
<100**

出典:「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 表3-2 リスク区分別脂質管理目標値」をもとに作成

⚫︎*糖尿病において、PAD、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合に考慮する。(第3章5.2参照)
⚫︎**「急性冠症候群」、「家族性高コレステロール血症」、「糖尿病」、「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞(明らかなアテロームを伴うその他の
脳梗塞を含む)」の4病態のいずれかを合併する場合に考慮する。
⚫︎一次予防における管理目標達成の手段は非薬物療法が基本であるが、いずれの管理区分においてもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は薬物治療
を考慮する。家族性高コレステロール血症の可能性も念頭に置いておく。(第4章参照))
⚫︎まずLDL-Cの管理目標値を達成し、次にnon-HDL-Cの達成を目指す。LDL-Cの管理目標を達成してもnon-HDL-Cが高い場合は高TG血症を
伴うことが多く、その管理が重要となる。低HDL-Cについては基本的には生活習慣の改善で対処すべきである。
⚫︎これらの値はあくまでも到達努力目標であり、一次予防(低・中リスク)においてはLDL-C低下率20~30%も目標値としてなり得る。
⚫︎***10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。それ以外の条件を「随時」とする。
⚫︎****頭蓋内外動脈の50%以上の搾取、または弓部大動脈粥腫(最大肥厚4mm以上)
⚫︎高齢者については第7章を参照。