小林秀樹先生の心臓再生医療に関する論文が、2024年4月26日に米国心臓協会(American Heart Association;AHA)の科学雑誌「Circulation」オンライン版に掲載されました。
重篤な心筋梗塞では、数億個もの心筋細胞が失われてしまい、難治性の心不全を発症することが知られています。ヒトを含む哺乳類は、失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていません。そこで、理論的に体を構成するすべての細胞へと分化できる、ヒト人工多能性幹細胞(iPS 細胞)から作製した心筋細胞を移植する「再生医療」の実現が期待されています。しかし、ヒトiPS 細胞から分化した心筋細胞を移植した後に心室性不整脈が発生することが、再生医療実現化への大きなハードルになっていました。
当教室の小林秀樹診療助教、桑原宏一郎教授、再生医科学教室の柴祐司教授、慶應義塾大学医学部内科学教室の遠山周吾講師、福田恵一名誉教授らの研究グループは、Heartseed 株式会社と共同して、臨床治療用のヒトiPS 細胞から心筋球と呼ばれる微小心筋組織塊を作製し、心筋梗塞を発症させたカニクイザルの心臓に移植したところ、移植した心筋細胞が⾧期に渡って生着し、サルの心機能を回復させることに成功しました。また、従来の報告と比較して移植後に発生する心室性不整脈の副作用が格段に少ないことを明らかにしました。
この研究成果は、移植後に発生する心室性不整脈という大きな課題を解決し、心臓の再生医療の実現化を大きく加速するものと考えられました。本研究成果に基づき、ヒトを対象とした臨床治験(LAPiS 試験)が国内で開始されています。今後、当教室もこの臨床治験に参加し、心筋梗塞による難治性心不全に苦しむ患者さんに、「再生医療」という新しい根本的治療を提供できるように努めて参ります。
本研究成果はAHAの科学雑誌「Circulation」に掲載されました。また、4月26日の報道解禁時間に併せて各メディアへプレスリリースを行うとともに、世界最大規模のオンラインニュースサービスEurekAlert!にも掲載されました。詳細につきましては、以下の信州大学医学部、慶應義塾大学のホームページ、およびEurekAlert!のホームページをご覧ください。

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