当教室の桑原宏一郎教授、信州大学医学部分子薬理学教室 山田充彦教授、京都大学大学院医学研究科循環器内科学 中川靖章助教らのグループはミシガン大学、順天堂大学などとの共同研究により心不全の新たな発症・進展メカニズムを解明しました。この研究成果は2021年12月8日に「Circulation Research (IF:17.367)」のオンライン版に掲載されました。
心不全は予後不良の疾患症候群であり、本邦でもその患者が増加していることから、心不全の病態解明に基づく新規治療薬の開発が望まれています。今回研究グループは、転写抑制因子NRSFにより制御され不全心において発現亢進する遺伝子GNAO1の発現抑制が複数のマウス心不全モデルにおいてその病態を改善すること、逆に心筋におけるGNAO1の過剰発現は心機能低下を引き起こすことを見出しました。またGNAO1が心不全にかかわるメカニズムとして、GNAO1によりコードされるタンパク質Goの発現亢進が心筋表面細胞膜におけるL型カルシウムチャネルの活性を上昇させることで心筋細胞内での病的カルシウムシグナル経路の活性化とカルシウムイオン調節恒常性破綻をきたすことを見出し、Goの病的ストレスによる心筋での発現亢進が心不全の発症・進展にかかわっていることを世界で初めて明らかにしました。本研究は心不全の新しい治療薬開発に役立つことが期待されます。
【論文タイトルと著者】
題目:NRSF-GNAO1 Pathway Contributes to the Regulation of Cardiac Ca2+ Homeostasis
著者:Hideaki Inazumi, Koichiro Kuwahara, Yasuaki Nakagawa, Yoshihiro Kuwabara, Takuro Numaga-Tomita, Toshihide Kashihara, Tsutomu Nakada, Nagomi Kurebayashi, Miku Oya, Miki Nonaka, Masami Sugihara, Hideyuki Kinoshita, Kenji Moriuchi, Hiromu Yanagisawa, Toshio Nishikimi, Hirohiko Motoki, Mitsuhiko Yamada, Sachio Morimoto, Kinya Otsu, Richard M. Mortensen, Kazuwa Nakao, Takeshi Kimura
掲載誌:Circulation Research
掲載日:2021年12月8日
PMID: 34875852
DOI: 10.1161/CIRCRESAHA.121.318898